海堂尊の本を紹介します

海堂尊の本を読みました。書名をクリックするとその本の紹介へジャンプします。

外科医 須磨久善 海堂尊 講談社文庫

外科医 須磨久善 海堂尊

内容(裏表紙のあらすじより)

超一流は突然出現する。まるで、夜空に突然眩い光を発する超新星のように。日本初の心臓難手術、「バチスタ手術」に挑んだ超新星・須磨久善とはどんな人間なのか。須磨が、「破境者」として多くの人々をインスパイアし、世界の心臓外科医の頂点に至るまでの戦略を、胸揺さぶる筆致で描く興奮ノンフィクション。

読んでみての感想

この作品を読むまでは須磨久善(すまひさよし)さんの名前は知らなかった。「バチスタ手術」の日本初の施術者であることも。
「チーム・バチスタの栄光」で描かれた、作者海堂尊によるフィクションかとも思っていたくらい。”バチスタ”って、この手術の創始者の名前だったんだ。

 

須磨が天才であることを筆者の海堂は次々と実証していく。その中で私の印象に残るものを挙げていこう。
・手術をする際、須磨が最も重視するのはイメージである。ネガティブ・イメージ・トレーニングを行うことで、すべての事象を自分の想定内の世界に封じ込めることができる。すると次第に須磨のイメージは、ポジティヴな方向へ変わっていく。

 

・決断する時は他人に相談しないというのも須磨の流儀だ。須磨が他人に相談する時、すでに決断は済んでいる。では何を相談するかというと、他の角度から見て欠陥がないかどうかをチェックしてもらうのだという。自問自答を繰り返し、須磨はここまで登りつめた。

 

・須磨が医師を目指した原点は、自分の治療によって患者がよくなり、その喜びを共にしたいと思ったからだった。

 

・須磨は問いかける。「困っている人をどれだけ助けられるか、ということが医療の本道です。選ばれた人だけに特殊な治療を施してどれだけ生存曲線を延ばすことができたか、というのも確かに医療ですけど、それは全体から見ればごく一部。ですから移植も大切ですが、移植せず自分の心臓を治していくという道も模索しなくてはならないのです」

 

・「クリエイティブ・マインド」これは、須磨が常に自分に言い聞かせてきた言葉だ。
クリエイティブ・マインドがなければ、外科学の進歩はない。全てが自己満足の範囲内で収束してしまうからだ。すると現在助からない患者はいつまでも救われない。従来不可能だった手術ができるようになり、リファインされ新術式が生まれ、ずば抜けた成功を収める。これが、クリエイティブ・マインドの賜物だ。

 

・須磨は、様々なことにトライしてきたが、振り返ってみて大失敗はなかったという。失敗したかなと思っても、続けているとその失敗が今の大成功に繋がってしまう。おおきな願いは、ほぼすべて叶っている。その大きな試みには、邪魔する敵役もいれば、絶望的なピンチが立ちはだかったりする。須磨も苦境に陥るが、失敗や裏切られることを繰り返すと、それに慣れてくる。
人間とはそういう生き物なんだ、と割り切って考えている。

 

・「人が自分をどう思っているとか、ひそひそ話の中身みたいな小さな問題よりもはるかに、自分が自分の行為をどう思うかの方が大切です。たどりついたゴールが、本当に最初に目指していたゴールかどうか、そうした問いに対する回答がイエスなら、あとは、まあそこそこ、どうでもいいのではないでしょうか」

 

以上、ざっと上げてみた。
自分の利益でなく、他者の利益を追い求める、それを信念にして、常にそれに立ち帰りながら、人生を進んできた。そういう須磨はすごい。
それを汲み取り文章に著わした海堂も偉い。(2017.09.10)

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マドンナ・ヴェルデ 新潮文庫 海堂尊

マドンナ・ウェルデ 海堂尊

内容(裏表紙のあらすじより)

美貌の産婦人科医・曽根崎理恵、人呼んで冷徹な魔女(クールウイッチ)。彼女は母に問う。ママ、わたしの子供を産んでくれない……・? 日本では許されぬ代理出産にいそむ、母・山咲みどり。これは誰の子どもか、わたしが産むのは、子か、孫か。やがて明らかになる魔女の嘘は、母娘の関係を変化させ……。
「ジーン・ワルツ」で語られなかった、もう一つの物語。新世紀のメディカル・エンターテインメント第2弾。

読んでみての感想

この作品の母娘の考え方の違い、その隔たりの大きさには驚かされた。代理出産というテーマやその母親が代理母になるということは初めて知らされたし、確かにそれでいいのだろうか?と考えさせられもする。
母みどりを聖母に例え、娘理恵を魔女に例える。聖母は人間らしさを追求し、魔女は医学の進歩のためならすべてを犠牲にする。その対立が、生まれてこようとする子供を対象にして繰り広げられていく。
結局、魔女のかたくなな心は聖母に解かされるのだが、代理出産の問題を世に問うことについてはなかったことになってしまう。これでよかったのかな?人間的には子供を犠牲にしてでも目的を達成することは許されないから、この結末しかなかったのだろう。
小説家の海堂尊にとっては、この問題を作品にして世の中に問うことで目的が達成されただろうし、松坂慶子さん主演のテレビドラマとして放送されたのだからなおさら満足だろう。(2017.06.21)

 

 

極北ラプソディー 朝日文庫 海堂尊

極北ラプソディー 海堂尊

内容(裏表紙のあらすじより)

財政破綻した極北市の市民病院。再建を図る新院長・世良は、人員削減や救急診療の委託を断行、非常勤医の今中に”将軍”速水が仕切る雪見市の救命救急センターへの出向を指示する。
崩壊寸前の地域医療はドクターヘリで救えるか?医療格差を描く問題作。

読んでみての感想

後半までじっくりと状況を描き、それから一気にクライマックスに持っていくいつもの海堂スタイル。本作も楽しめました。
薬をたくさん出すこと、そしてそが保険料の負担になる。とか、具体的な問題が挙げられていてよくわかる。極北市と雪見市の行政の医療への考え方が対比的に描かれていて、その問題点を徹底的にあぶり出そうとする世良の考え方がストーリーに終盤になって今中にも、読者にも理解できるようにストーリーが組み立てられている。堂々巡りして解決困難な問題への取り組み方の具体例として提示されている作品だと言える。
削るところは徹底的に削り、頼めるところは他に頼む。
少子化対策として、行政の区割りに頼らずに、もっと広域での対応にしようという考え方はもっと社会で取り入れるべきではないだろうか。(2017.06.11)

 

 

ランクA病院の愉悦 新潮文庫 海堂尊

ランクA病院の愉悦 海堂尊

内容(裏表紙のあらすじより)

とんでもない医療格差が出現した近未来の日本。売れない作家の終田千粒(ついだせんりゅう)は「ランクC病院」で銀行のATMに似たロボットの診療しか受けられない。そんな彼に「ランクA病院」潜入取材の注文が舞い込む表題作。
”日本一の健康優良児”を目指す国家プロジェクトに選ばれた男の悲喜劇「健康増進モデル事業」など、奇抜な着想で医療の未来を映し出す傑作短編集。「ガンコロリン」改題。(裏表紙のあらすじより)
私は愛国者なので日本にワクチンを打っておきたいと考えている。この短編集もそんなワクチンの一冊である。ここに書かれた物語はフィクションだが絵空事ではない。そう思ってこころして読んでほしい。(「作家十年目、おまけのあとがき」より)

読んでみての感想

久しぶりに海堂尊さんの著書が読めました。まだ4年ほどしか経っていない。
医療小説って、専門的な話なようで、身近に感じられるから不思議。何か自分のことのように感じられて読んでいても引きこまれる。
5編の中では、「ガンコロリン」が本当に皆が夢見て待ち望んでいる薬の開発が成功した話で、こうなればいいなと読み進めていってしまった。最後の疫学的見地に関するどんでん返しが、なるほどと感服。これじゃ人間は永久に病気からは逃れられないのね。
「被災地の空」は東北大震災発生の時の、救急医療隊の活動をベースに書かれている。現場の混乱、せっかく駆けつけても重症患者を診ることができないというもどかしさが伝わってくる作品。
「ランクA病院の愉悦」は主人公終田のへそ曲がりで頑固な性格が著者の姿を映しているようで笑える。病院をランクAからランクCまでに分けるという未来の設定になっているが、確かに作者の言うように、これは現在の医療格差そのものを皮肉っていますね。ばかばかしいくらい皮肉っぽい。
海堂さんは、あとが気によると、今後は医療小説から離れて、キューバのチェ・ゲバラにまつわる小説にシフトするらしい。そういう分野は読んだことがないが、海堂さんの小説なら機会があれば読んでみたいな(2017.05.10)

 

 

ケルベロスの肖像 海堂尊

「BOOK」データベースより

東城大学病院を破壊する―病院に届いた一通の脅迫状。高階病院長は、“愚痴外来”の田口医師に犯人を突き止めるよう依頼する。厚生労働省のロジカル・モンスター白鳥の部下、姫宮からアドバイスを得て、調査を始めた田口。警察、法医学会など様々な組織の思惑が交錯するなか、エーアイセンター設立の日、何かが起きる!?文庫オリジナル特典として単行本未収録の掌編を特別収録!

 

 

ナニワ・モンスター (新潮文庫) 海堂尊

あらすじ

浪速府で発生した新型インフルエンザ「キャメル」。致死率の低いウイルスにもかかわらず、報道は過熱の一途を辿り、政府はナニワの経済封鎖を決定する。壊滅的な打撃を受ける関西圏。その裏には霞ヶ関が仕掛けた巨大な陰謀があった――。風雲児・村雨弘毅(ドラゴン)府知事、特捜部のエース・鎌形雅史(カマイタチ)、そして大法螺吹き(スカラムーシュ)・彦根新吾は、この事態にどう動く……? 海堂サーガ、新章開幕。

 

 

ブレイズメス1990 (海堂 尊)

「BOOK」データベースより

この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。

 

 

アリアドネの弾丸 (海堂 尊)

裏表紙のあらすじより

大人気医療ミステリー、田口&白鳥シリーズ第5弾! 不定愁訴外来の田口公平医師はいつものように高階病院長に呼び出され、エーアイセンターのセンター長に任命されてしまう。そのため田口は、東城大学病院に新しく導入された新型の縦型MRI、コロンブスエッグの説明を技術者の友野から受けていた。しかしその矢先、MRIの中で友野が亡くなった。死因は不明、過労死と判断されたが・・・・。

裏表紙のあらすじより


宇佐見警視は銃声の聞こえた方へ走りだす。田口らが後を追うと、最新縦型MRI・コロンブスエッグの中には目から血を流す死体があった。そして傍らには、拳銃を握った高階病院長が倒れていた・・・。銃弾の種類と手の硝煙反応から、警察は高階病院長を現行犯逮捕する。高階の無罪を信じる白鳥・田口は、72時間以内に犯人の仕掛ける完全無欠のトリックを暴くことができるのか!?()

感想

本のタイトルが、トリックの一部を暗示する。謎解きの部分になってようやく理解しました。
どうもこういうトリック小説は、私には向いていません。こちらの方面がお好きな方には、とてもお勧めでしょうl。
(2013.10.14記)

 

 

夢見る黄金地球儀 (海堂 尊)

裏表紙のあらすじより

1988年、桜宮市にまいこんでだ「ふるさと創生一億円」は、迷走の末「黄金地球儀」となった。四半世紀の後、投げやりに水族館に転がされたその地球儀を強奪せんとする不届き者が現れる。物理学者の夢をあきらめ実家の町工場を手伝う俺と、8年ぶりに現れた悪友・ガラスのジョー。二転三転する計画の行方は? 新世紀ベストセラー作家による、爽快なジェットコースター・ノベル!

感想

第一部が登場人物の紹介。それぞれの個性が描かれていきます。
第二部は、黄金地球儀の強奪作戦。主人公平沼啓介が気の進まぬままに、お膳立てがどんどん進み、啓介もだんだんその気になっていきます。第三部は、当初の計画通り、一旦するか得た偽物と本物をすりかえるくだり。盗んだものが黄金地球儀は既に価値のないものになっていたけれども、元に戻す必要がある。これもトントン拍子にことが運びます。
読んでいても、「あまりすりるものないし、なんか変なお話だな」という気がさせられていましたが、最後の最後になって、種明かしがされます。
右往左往させられた主人公の啓介でしたが、実は・・・ストーリーもともかくとして、登場する脇役のネーミングが、「ボンクラホヤ」とか、「ウスボンヤリボヤ」などと相変わらず、この作者のネーミングのユニークさに感心?させられます。(2013.09.29記)

ひかりの剣(海道 尊)

裏表紙のあらすじから

覇者は外科の世界で大成するといわれる医学部剣道部の「医鷲旗大会」。そこで、桜宮・東城大の<猛虎>速水晃一と、東京・帝華大の<伏龍>清川吾朗による伝説の闘いがあった。東城大の顧問・高階ら「チーム・バチスタ」でおなじみの面々がメスの代わりに竹刀で鎬(しのぎ)を削る。医療ミステリーの騎手が放つ青春小説。

感想

とにかく面白かったです。
剣道は、中学校の体育の授業で少しかじりましたが、防具が臭くて、竹刀が当たると痛くて良い思い出はありません。
この話のように、一流の剣士の闘いは手に汗を握ります。
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登場人物が、チーム・バチスタのメンバーで、その若いころのお話です。
読んでて、特に、速水の性格って本質的に真面目だったということが納得させられました。(2013.07.06記)

 

 

ジーン・ワルツ(海堂尊)

裏表紙のあらすじより

帝華大学医学部の曽根崎理恵助教は、顕微鏡下体外受精のエキスパート。
彼女の上司である清川吾朗准教授もその才を認めていた。
理恵は、大学での研究のほか、閉院間近のマリアクリニックで五人の妊婦を診ている。
年齢も境遇も異なる女たちは、それぞれに深刻な事情を抱えていた・・・・。
生命の意味と尊厳、そして代理母出産という人類最大の難問に挑む、新世紀の医学エンターテインメント。

感想

体外受精、そして代理母出産を扱った小説です。
子供を産みたくても産めない女性にとっては、最後の頼みの綱ともいえますが、日本では認められていません。
つい最近、タイで産み分けが話題になったばかりです。
少子化が問題になっている日本でも、生みたい女性に希望を与えるこのテーマについてもっと真剣に議論されていいのでは。と、思いを抱かさせられました。

 

 

ブラックぺアン(海堂尊)

感想

海堂尊が面白いです。「ブラックぺアン」を追加しました。これまでで、一番おもしろかったかもしれない。

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